丘陵の段石庭園
自然の丘陵地形を最大限に活かした、石積みテラスによる多層的景観空間
大地の記憶を刻む
松本市郊外の緩やかな丘陵に広がるこの敷地は、かつて果樹園として利用されていた土地です。依頼人の希望は、農地として育まれてきた土地の記憶を継承しながらも、現代的な石の庭として再生することでした。私たちは、既存の土地の高低差を活かした段状構成を採用し、人が歩くたびに異なる景色と空間体験が展開するよう設計しました。
石材は松本市内の採石場から産出する安山岩を主体とし、要所に稲田御影石を組み合わせています。安山岩のもつ粗い肌理と御影石の細密な表情が対比を生み出し、全体の景観に深みと緊張感をもたらしています。石積みの技法は、伝統的な空積み(からづみ)を基本としながら、現代の安全基準に対応した構造補強を内包する独自の工法を採用しました。
敷地内に湧く地下水を活用した水景施設は、庭園全体に静かな流れの音を届けます。冬には霜柱が石の表面を飾り、春には山野草が石の間から芽吹く——四季の変化が庭の表情を豊かにし、時間とともに深まる景観を実現しています。
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設計の方法論
本プロジェクトの中心的な設計命題は、「人工と自然の境界を消す」ことでした。石積みテラスの高さと奥行きは、人が立つ視点からの眺望を精密に計算し、各段で異なる山岳パノラマが展開するよう調整されています。
植栽計画は、信州の在来植物42種を選定し、石の隙間や段差の縁に配置しました。植物の成長とともに石と緑が一体化し、10年、20年後の庭の姿を想定した長期的な設計視点が全体を貫いています。
水景施設は湧水を活用した自然循環型システムを採用し、ポンプ動力を最小限に抑えながら、四季を通じて安定した水の流れを確保しています。石と水、緑と光——すべての要素が有機的に連携し、この丘陵の地形が持つ本来の力を引き出す空間となりました。
| 設計期間 | 2023年6月〜11月 |
| 施工期間 | 2024年3月〜11月 |
| 主要素材 | 安山岩、御影石、玄武岩 |
| 植栽 | 在来植物 42種 |
| 水景施設 | 湧水活用型循環システム |
| デザイナー | 石田 雅章 + 山口 純子 |
「この庭を歩くたびに、松本の大地がまだここに生きていることを感じます。石積みの向こうに見える北アルプスの稜線と、足元の石の質感が、時間と場所の記憶を静かに語りかけてくれる。それがGeese Stone Perchに依頼してよかった、と思う瞬間です。」T. Yamashita — クライアント、長野県松本市